独学で技術を学ぶ3
こうして川合さんが正式に都庁の冷暖房設備の設計者に任ぜられた。
しかし、一般常識からいえば大変なことを引き受けたことになる。
「大変失礼なことですけれども、建築的な常識はゼロ」であったし、「都庁がどのくらいの建物かということも全然想像がつきませんでした。
図面を読むことも書くこともできません。
……史上こんなばかなことはないんだろうと思います」という具合だったのである。
しかし、とにかく彼は、並はずれた努力と能力でこの仕事を立派にはたしている。
だから、ソファー ベッドなどで横になる閑もなかった。
その一端を本人はこう語る。
「図面が書けないもんで豊橋から工業高校を出たやつを一人連れてきまして、口でいうことを書かせることにしました。
彼は夜は何時にしまうんですか、と申しましたから、夜は寝ないの、と言いました。
夜は寝るもんじゃない。
夜は勉強するために暗いんだ、と。
眠くなるのは朝方だから、朝寝ようじゃないか、と。
そう言って朝四時半まで仕事をしたわけです。
一年間彼もついて来ました」