ワインの階層化
長かった三十年戦争もようやく終結に近づいた一六四四年、地理学者のマティアス・メリアンは主著『トポグラフィア・アルザティアエ』(アルザス地誌)のなかに、《ワイン街道》に連なる代表的な生産地と地酒とを結びつけながら、アルザス・ワインをこう讃美しています。
「……タンにはランジャンギィーウィレにはウァンヌテユルケムにはプラン無上の地酒ここに集まれり」
あのへラクレスが遠征帰りに立ち寄り、求めた美酒に酔い痴れて大切な大槌を忘れた。との伝承が今も残るアルザスであってみれぼ、この地でいろいろな名酒が生まれたとしても何らおかしくはありません。
伝統的に営々と積み重ねられてきたブドウの栽培力、すなわちブドウ株の新種導入や同業組合主導になる栽培法の指導、そしてグールメたちの品質管理などに多くを負っています。
むろん銘醸ワインは、、王に王侯貴族や富裕市民の味覚やディレッタンティズムを満足させるためのものであり、一般市民や農民たちの増外にあったのです。
後者はかなり品質の劣る安価なワイン《ピケット》でよしとしなければならなかったのです。
その限りにおいて言えば、ワインとはあらゆる飲食物のなかで、最も階層化の進んだ飲料の1つだったのです。
ワイン文化ってやっぱりフランスが本場だと思いますが、通販でワインを簡単に買えるようになった日本でも、誰でも手軽に味わえる機会が増えて良いですね。